雪国文化を発信する宿として100年後も語り継がれる地域づくりをリードする

株式会社いせん

温泉旅館の経営

GREAT COMPANY AWARD 2020株式会社いせん温泉旅館の経営

推薦ポイント

宿に囲い込まず、地域に来てもらう宿づくりへ

当社は越後湯沢に温泉旅館として1933年に創業し、2005年に私が4代目として経営を引き継ぎました。私は旅行客を宿単体で満足させようとする従来の旅館のあり方と、実際に旅行客が求めることへのギャップを感じていました。またスキーブームの終焉も重なり、当社の既存客数が3割まで減ったことから、脱慣例を掲げた改革を始めました。

景観が損なわれる駅前立地では旅情をそそられないという短所は、地域の玄関口にするという発想に転換し、江戸時代に旅の寄り場として栄えた旅籠に戻る意味も込めて、『HATAGO井仙』と改称、リニューアルしました。

コンセプトは「現代の旅籠」です。地域らしい情緒性を感じられる旅館と越後湯沢の玄関口としての機能性をもったホテルのいいとこ取りです。具体的には、全室異なる内装にし、布団準備は廃止、夕食は地域の好きな店を選べるよう泊食を分離しました。反対に、宿泊者以外も利用できる地元食材を使ったレストランやカフェ、お土産店を展開し、地域から宿へ訪れてもらうよう町の一部としての宿に作り変えていきました。

スタッフが自社の宿や飲食店、周辺地域へお客様目線で実際に出向くことで、実体験に基づいたサービス提供をしている
スタッフが自社の宿や飲食店、周辺地域へお客様目線で実際に出向くことで、実体験に基づいたサービス提供をしている

地域独自の価値を再構築した『雪国観光圏』の設立

数ある観光地に競り勝つには、越後湯沢だけの価値を高めても、いずれ地域と共に倒れるであろうと危機感も芽生えていました。そこで私は2008年、3県7市町村を一つのエリアとした地域ブランドの枠組み『雪国観光圏』を立ち上げました。

このエリアには、自然、伝統、産業、食など、8000年前から雪の中で育まれた知恵『雪国文化』があり、旅行客がエリアのどこでもこの文化を体感できるよう、これら単体の要素をストーリーとして結び、地域をまるごとブランディングすることが、100年先まで語り継がれる強い地域づくりになると確信しました。私が宿の経営者仲間や地元生産者のもとへ足繁く通いながら雪国の知恵や暮らしを体感できるツアーを共に組み立てると、徐々に賛同してくれる人が増えていきました。

また、ブランドはストーリーと品質が揃ってこそ価値が生まれます。特に地域に対する品質は最重要ではないかと考えました。多くの観光地ではプロモーションは積極的におこないますが、提供されるサービス品質についてはまったく触れていません。

雪国観光圏では、旅館やホテルの品質認証制度である『サクラクオリティー』という基準を設けました。今では45軒の旅館や民宿が認証を受けています。さらに、飲食店で扱う食品の情報公開を徹底する日本発の独自プロジェクト『雪国A級グルメ』という認証制度も取り入れています。

これらは、はじめて湯沢を訪れる人にとっても、滞在時の過ごし方を選択する基準とされるまで浸透しています。

地域に馴染む体験のひとつ『土間クッキング』。地元のおばあちゃんが一緒に料理を作りながら、雪国の食文化を直伝する
地域に馴染む体験のひとつ『土間クッキング』。地元のおばあちゃんが一緒に料理を作りながら、雪国の食文化を直伝する

伝統宿を機能的に変え、新たな価値の発信源に変貌させた

近年、旅のトレンドは、宿に泊まる『非日常体験』から、訪れた土地の暮らしや文化を楽しむ『異日常体験』へと変化しています。

2018年、私は50年以上の歴史がある『温泉御宿龍言』の経営権を譲り受けました。元々格式高い伝統宿で、旅行客を囲い込む従来の旅館像そのものでした。それを雪国文化の象徴的存在として機能的で自由な宿に変貌させれば、雪国観光圏の価値や地元住民の意識は劇的に向上するだろうと考えました。

また、観光地としては不便ともいえる地域内部に位置する立地をあえて活かした地元の暮らしを体験できるツアー等を用意し、雪国文化の空気感が味わえる宿『ryugon』へ2019年7月に全面リニューアルしました。

私は地域創生のカギは共生だと思っています。今後も地域のためにできることをおこない、雪国文化をより可視化し世界とも渡り合える地域づくりを目指します。そして当社は、その中で最も雪国文化を体感できる地域のショールームであり続けたいと思っています。

越後湯沢駅から車で30分。宿の中では、リラクゼーションを、宿の外では雪国の暮らしを体感できる
越後湯沢駅から車で30分。宿の中では、リラクゼーションを、宿の外では雪国の暮らしを体感できる
会社概要
社名
株式会社いせん
創業
1933年
設立
1952年
代表者氏名
井口 智裕
資本金
1,550万円
年間売上
7億8,000万円(2019年)
従業員数
55名(2020年6月1日時点)
本社所在地
新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢2455
電話
025-784-3361
URL
業務内容
温泉旅館の経営
代表取締役社長:井口 智裕氏
お話し
代表取締役社長
井口 智裕氏