ピーク時から4割減する市場で1.5倍成長する自動車教習所

株式会社武蔵境自動車教習所

(自動車教習所)

GREAT COMPANY AWARD 2020 働く社員が誇りを感じる会社賞株式会社武蔵境自動車教習所(自動車教習所)

推薦ポイント

教育業からサービス業に変える

当社は、前回、1964年の東京オリンピックを控えたモータリゼーションが花開こうとする1960年に、私の叔父(吉野七郎)が創業しました。その時、私は生命保険会社で営業部長をしていたのですが、副社長であった父が体調を崩したことをきっかけに1982年に一社員として当社に入社しました。

それまで常に成果を求められていた私は旧態依然とした経営状態に衝撃を受けました。時代の追い風を受けて何もせずとも集客できていたがためにビジョンも社員教育もなく、社員も口を開けば不平不満ばかりといった有り様でした。

1988年には労働組合が発足し、経営陣に対する風当たりは過激化します。翌年、創業社長が退任し、引き継いだ二代目の叔父(髙橋力男)は就任直後に自死を図りました。そこで急遽、私が経営を引き継ぐことになったのです。ここから10年、労働組合と向き合い続けることになります。

私は社長就任後、開口一番「教育業をやめます。これからはサービス業を目指します」と宣言しました。そして、組合員から心が折れるような態度をとられても、諦めず自分からコミュニケーションをとり続けました。

髙橋勇氏が経営を引き継ぎ、社員の意識改革をしたことでサービスレベルも向上した
髙橋勇氏が経営を引き継ぎ、社員の意識改革をしたことでサービスレベルも向上した

地域貢献がいちばんの社員教育

5年後、私が外部の研修を受けた時に、「経営理念が大事だ。そして、お客様目線でなければならない」と気づきました。勉強の大切さが身に染みたので、翌年には社員にも外部の研修に参加してもらいました。

すると会社の中で一部ではありましたが勉強する文化が生まれました。並行して、当時珍しかった女性インストラクターの導入、年功序列をやめて若手の抜擢をしていくと社内の空気が変化していきました。ほかのことに気が逸れることでしだいに労働組合の力は弱まっていきました。

「地域社会に目を向ける」という発想が出たのもこのころです。「自動車教習所は教習所の敷地内で完結できない。地域社会に目を向けた経営をしよう」と組合に提案したところ、年末に餅つき大会をすることになりました。来場者は100名ほど、社員が5名手伝ってくれました。

今に比べればずいぶんと小規模でしたが、イベント終了後には担当した社員のほうから「来年は花火大会をやりましょう」と提案してくれました。これは「成功した」と思いました。ここから、夏は花火、冬は餅つき大会、春秋はフリーマーケットというように、社員と地域住民との交流が深まっていきました。

地域からの信頼が積みあがることで、社員の仕事に対する誇りも高くなっていく様子が見て取れます。今では、地域交流室という専門の部署を置くほど、会社にとって重要なことと位置づけています。

当社の経営理念は「共尊共栄」です。

  • 社員を大切にする。社員満足の追求。

  • お客様への貢献。お客様満足の追求。

  • 地域社会への貢献

この3つを大切にすることで時代の変化に流されず、結果的にお客様を増やすことができていると思います。

同社主催のフリーマーケット。現在はコロナ禍でもできる教習所敷地内での野菜収穫を実施
同社主催のフリーマーケット。現在はコロナ禍でもできる教習所敷地内での野菜収穫を実施

教習そのものだけが商品価値ではない

お客様への貢献という視点で、当社のサービスを象徴するのは「IT-VIPコース」です。ITはI(至れり)T(尽くせり)の略ですが、その名の通り、教習以外の付加価値を提供しています。高酸素カプセルやマッサージなどの設備が利用できるだけでなく、待合室を分け、コンシェルジュによるきめ細やかな対応をしています。料金は標準コースの3割程度高くなるにもかかわらず、全体の12%が利用されています。

IT-VIPコースの利用者は、「スーパーインストラクター」が教習担当としてつきます。これはお客様のアンケートをもとにして、上位25%に与えられる称号です。これにより社員も切磋琢磨するようになり、サービス品質の底上げにつながっています。

ある時、68歳のご婦人が、週に何度も通院するご主人を送り迎えするために免許を取りに入所されました。免許取得の3か月後、うれしそうに「今は、主人と高速に乗って温泉に行くようになったんですよ」と近況報告しに来てくれました。このエピソードによって、自社の商品価値に気づかされました。これ以降、社員には「私たちの仕事はお客様の人生を豊かにすることが使命」と伝えています。

お客様の声に耳を傾け、サービスの徹底をすることで経営を盤石にしつつも、同時に未来の準備をしています。自動運転が実現すれば、自動車教習所は不要になるでしょう。その時を見据えて、若手が活躍できる環境を整え、新規事業部を設置し、アイデアを事業化していく体制をつくっています。すでに高齢者施設、保育事業、人材育成事業を走らせています。そのほかAIに関する事業なども注目しています。

当社は自動車教習所事業で他社と差別化ができたことで多くの方に利用いただけたと思っています。新規事業でも差別化という強みを発揮して、社員やその家族、地域のためにも発展し続けたいと思っています。

割高でも「IT-VIPコース」が選ばれるのは、安心や特別感を提供する社員の働きが大きい
割高でも「IT-VIPコース」が選ばれるのは、安心や特別感を提供する社員の働きが大きい

『働く社員が誇りを感じる会社賞』
受賞理由

同社は東京都武蔵野市に1960年に創業した自動車教習所を運営する会社です。少子化や都市部における車離れを理由に、年間の免許取得数がピークであった30年前と比較して4割減と厳しい環境のなか、同社は30年で入所者数を1.5倍に増やしています。同社を象徴する高額コース『 IT(至れり尽くせり)- VIPプラン』は『エコノミープラン』と変わらぬ「免許取得」という目的ながら12%弱も利用されています。新規顧客の8割が口コミや紹介経由ということも入所者側に立ったサービスが高く評価されていることの表れです。これらは経営理念である「共尊共栄」や「自動車教習は教育ではなくサービス産業」という考え方を社員が実践できていることから生み出されています。また、社員の意識を高める施策として、専門部署を設置するほど地域活動を重視しています。社員の理念浸透をベースに働きがいをもって顧客や地域社会に貢献する同社に『働く社員が誇りを感じる会社賞』を贈らせていただきます。

※『グレートカンパニーアワード2020』の審査会は2020年3月30日に開催しました。本審査では2020年3月時点に取得した情報・数値をもとに選考しています。

会社概要
社名
株式会社武蔵境自動車教習所
創業
1960年
設立
1960年
代表者氏名
髙橋 勇
資本金
1,100万円
年間売上
18億9千万円(2019年)
従業員数
160名(2020年6月時点)
本社所在地
東京都武蔵野市境2-6-43
電話
0422-51-7381
URL
https://musasisakai-ds.co.jp/
業務内容
自動車教習所
代表取締役会長:髙橋 勇氏
お話し
代表取締役会長
髙橋 勇氏